従来の水道における浄水処理の基本は、塩素消毒と固液分離プロセスです。固液分離には、凝集沈澱及び砂ろ過が使用されています。しかし、近年水道水源水質の悪化から高度浄水処理を導入する事業体が増加する傾向にあり、また浄水場用地の取得難、技術者確保の困難性など水道を取り巻く環境の変化への対応として、よりコンパクトで効率的な浄水技術の開発が必要とされる状況となっています。また、塩素耐性を有する「クリプトスポリジウム」などの病原性原虫が新たな問題となってきています。一方、新素材としての「膜」の技術開発には著しいものがあり、平成23 年度末で全国の総施設数は743 施設(平成22 年度比:6 施設増(0.8%増))、総施設能力は1,303 千m3
/日(平成22 年度比:11 千m3/日の増(0.8%増))となっています。愛媛県内で36施設を数え、浄水設備の選択肢の一つとして検討されるまでになりました。
当社でも、愛媛県内7ヶ所で膜ろ過設備の設計の実績があり、今後も需要は増えるものと考えています。
クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)は、人や動物の腸などに寄生する約5µm(マイクロメートル)の原虫。口から体内に入り腸の中で増殖したクリプトスポリジウムは、糞便とともに排出され河川水や井戸水の汚染原因になります。主症状は、下痢や軽い発熱。クリプトスポリジウムは塩素消毒に強い抵抗力があり、従来の浄水処理で用いられている塩素消毒では効果が弱いため、多くの人が一度に利用する水道を介した集団感染が懸念されています。また「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」が策定され、対応が図られています。
膜ろ過とは、極めて微細な孔(1/1000mm程度)を有する膜に圧力をかけ水を通すことで、孔よりも大きい水中の不純物を除去することができる浄水処理技術です。下図のように膜には孔径や対象物質の大きさや駆動力などによって、主に精密ろ過(MF)膜、限外ろ過(UF)膜、ナノろ過(NF)膜、逆浸透(RO)膜の4つに分類されます。
膜の技術は様々なところで応用されており、国内の離島や水資源の確保が困難な地域などでは、海水中の塩分を除去し飲料水などとして利用する海水の淡水化施設として活用され、このほかにも下水処理分野や医療や食品の分野、エネルギーの分野など様々な分野で用いられています。